3章 「モナコの車」
エッフェル塔と冬のシャンゼリゼ通りに悠然と建つ凱旋門に感動した翌日は、映画007〜カジノ・ロワイヤル〜の舞台にも使われたカジノ・ド・モンテカルロがあるモナコへどうしても1回きりの人生なら行ってみたいと思っていたので飛行機の予約をさせて頂いていました。
そのフライトの前に5時間くらいある事に目が覚めて気付きましたので、それなら折角パリにいるのだしエルメスの本店に行ってみようと思いました。
ルーブル美術館やセーヌ川に今、家事で大変な事になってしまったノートル・ダム大聖堂も時間的に見て回ると5時間では回りきれないしモナコからパリに戻ってからゆっくり見たいと思ったからです。
ポケットWi-Fiは容量を気にしながら使わせて頂いていたのでホテルのWi-Fiに携帯を繋げさせて頂き、さっそくスーさんに連絡をさせて頂くとちょうど朝食を食べていたらしく直ぐに来て下さるとのお返事に申し訳なく
「ご飯中にすみません、、ゆっくり食べて下さい。」
とお伝えさせて頂くと
「大丈夫ですよ。まだ飲み物しか頼んでいなかったので。」
の返答に、いやーそれ余計に申し訳ないんですけど、と思いながら電話越しに朝食を切り上げられているのを聞いて自分も慌てて出かける支度をしました。
ものの5分くらいで部屋をノックされたので瞬間移動でもしたのではないかと思いドアを開けるとサンドイッチを片手に持ったスーさんが立っていて朝食の邪魔をしてしまった事を再度謝ると向かう途中で違うサンドイッチを食べたからとそのサンドイッチを有難い事に自分に渡してくれました。
そのサンドイッチを昨夜スーパーマーケットで買わせて頂いたお水で飲み込みホテルの外へ出かけようとドアマンさんにエルメスの本店に行きたいんです。
と伝えさせて頂くと全く通じずそれさえ見越して通訳と言うか副音声ぎみにスーさんが被せて話して下さったのには少し笑ってしまいました。
タクシーを止めてくれたドアマンさんが二言三言を運転手さんに話したと思ったらタクシーはそのまま行ってしまいキョトンと見ていた自分に
「エルメスはすぐそこなんですよ。タクシーだと反対方向で距離も短過ぎるから歩いて行かれた方が良いですよ。」
みたいな事を優しく一生懸命に話していらっしゃる感じで人差し指と中指を交互に振るジェスチャーで歩いて行く事を確認すると今度は行き方を説明して下さり指をさして見える交差点の所までは視界に入るので解るのですがその後の何ブロック先を曲がりその後を曲がりと言われている感じが呪文のように聞こえてしまい
「えっとあの交差点ですよね?すみませんその後がちょっと分からなくて、、」
とスーさんにお願いしようと思ったら今、話された道順をすでにメモに書き終えたみたいでした。
出来る!!本当に仕事が出来る人だなと感心させられました。
スーさんから写真がNGでSNSに仕事という事もあり出さない約束が無ければその場を撮らせて頂き凄い通訳さんがいると宣伝したい気分になりながら20年以上前にご結婚をなされていらっしゃるスーさんのご家族は心強いですね等と会話をしてメモのとおりに歩いて行くと白い一際目立つ建物の屋上に馬具店から始まったエルメスのマークである馬の彫像が見えてきました。
まだオープン前だと言うのにどんどん人が集まりお店の前は何十人もの長蛇の列でビックリしました。
その列に加わろうとするとスタッフさんが大声で何かを話され列が2つに分かれたのでどちら並ぶのか迷っていると
「どうやら国内外からバイヤーさんがこの本店に沢山来ているみたいでバイヤーさんの列とそうでない人の列に分かれるみたいですね。」
と教えて下さり並ばせて頂いていた列が半分くらいの長さになりました。
あれだけの行列が並んでいたのに開店と同時にワッと我先に入る人は誰もいなく、1つ1つを吟味しながら殆どの人がお買い物を楽しんでいるように見えました。
大きな店内で特に何を買おうと決めていなかった自分は色々な国の人たちが商品を愛でてスタッフさんと笑顔で会話をなされているのを見る方が好きでぐるぐると回っているとバッチリとスーツを着た1人の男性のお客さんが女性物の明るい色の商品を買う所を見てこの人もバイヤーさんで買い付けて売る人なのかなー?
と勝手に思い込んでしまい目が合うと笑顔で話しかけて説明をして下さいました。
どうやらその人は出張でパリに来ているらしく奥さんにプレゼントで買いに来られたそうでした。
パリに仕事で行った旦那さんがエルメスの本店でお土産を買って来てくれるなんて素敵過ぎます!!
この素晴らしい紳士の心温まるエピソードにお礼を伝えて結婚が出来たら自分も同じ事をしようと思いました。
まだ時間はあるのにスーさんからの空港には早めに着いておいた方が良いとのアドバイスに従いモナコで過ごす数日分の荷物をホテルに戻ろうとタクシー乗り場で待っているとホテル名を告げた途端に悪いけど歩いて行ってもらえますか、、と何台も言われてしまい本当にタクシーに乗れず帰りも歩きになりました。
日本だと少しの距離でもすんなり乗せてもらえるタクシーの感覚とは違うのだなと思いました。
ホテルからは短い距離ではなかったのでタクシーで空港に向かわせて頂き少しの時間ですが飛行機に乗せて頂き到着したニースの空港からまたまた空港にいるタクシーでモナコまで役1時間、予約させて頂いているカジノ・ド・モンテカルロの隣に立つホテルに向かう途中で自分は1人で何回も叫んでしまいました。
TVで何回もF1のレースで見たことのあるあのモナコのコースはそのまま街をコースに使われているようでここがその場所なのだと驚いてこんなカーブに成っていたんだ等とF1と同じコースをタクシーで実際に通っている事に感動をしたのです。
バチカン市国の次の世界で2番目に小さな国がモナコ公国なのでレース会場が東京だったらその中のドンピシャの○○区を走って頂いているような感じで何度もうわーっと連発している日本人が後ろにいるタクシーの運転手さんを心配にさせてしまったかも知れません。
急角度のカーブの坂道を上るとぐるっと回れるロータリーのような場所に出てその正面が宮殿みたいな造りになっていました。
泊まるホテルがその宮殿のような建物の隣だったのでロータリーをタクシーがグルリと回って頂き真ん中にあるクリスマス用のパビリオン モンテカルロと書かれている青いオブジェの綺麗さにに目を奪われながらオテル・ド・パリと言うホテルに到着しました。
このホテルはネットや海外旅行の本を見ていたら、たまたま目に止まった場所で人生で1度で良いから行ってみたいと思っていたのです。
ドアマンさんが荷物係りのポーターさんを呼んで下さり中に入ると豪華な内装に一際目立つようにクリスマスツリーが置かれていました。
長身でダンディなヒゲをたくわえられているコンシェルジュさんが笑顔で握手と挨拶をして下さりチェックインをスムーズに進めて下さる中で何でも聞いて下さいね。
のような事を言ってくれましたので、その一言だけで言葉の通じない自分には凄く嬉しくなりました。
エレベーターで部屋まで上がりドアが開くとこの先に何度も他国で同じ香りに遭遇すると思っていなかった、なんとも言えない良い香りがしたのが印象的でした。
記憶は香りと覚えると思い出しやすいと自分は思っていてキツくもなく甘くもなく、とてもリラックス出来るこの香りがとても好きになりました。
女神様のような彫刻が付いている優美な扉を開けた先の室内は広くて清潔感がありトイレには便器の隣に綺麗なビデと呼ばれる小さなもう一つのトイレみたいのがありました。
使用する機会がいつなのか良く分からなくて最後まで使えずににいましたが、ビデの横にかけてあるタオルは下半身用が一般らしく知らなかった自分はシャワーを浴びて思いっきり顔をそのタオルで拭いてしまい後から知って自分で笑ってしまいました。
モナコに到着して少しホッとしたのかお腹は空いてグーグー言っているので何か食べたいと思いポケットWi-Fiに繋いだ携帯でスーさんに連絡をさせて頂きご飯をどうするか話し合うと先ほどのコンシェルジュさんに電話をかけて下さるとの事で電話越しに部屋から電話で話されているレストランの単語を耳にして、食べに行くならお米が食べたいです。
と話されている途中でお願いをしてしまいました。
フランスに来てから美味しいと言われるパンは沢山食べさせて頂いていて日本人の自分はたったの数日でお米に飢えてしまっていました。
どうやらホテル内にあるレストランはラストオーダーが近いらしくロータリーをぐるっと回った反対側にあるカフェ・ド・パリと言うお店ならリゾットが食べれるようで予約のお願いをスーさんコンシェルジュさんと伝言ゲームでさせて頂いてしまいました。
スーさんが話し終えて教えて下さった情報によるとカフェ・ド・パリには併設されているカジノがあるようで、もし行かれるのでしたらジャケットを着た方が良いとの事でした。
お米が食べられるなら何でも良いと思っていましたが折角行くなら入れる格好の方が良いなと思いユニクロで買った冬に重宝している白いダウンジャケットからジャケットに着替えてロビーでスーさんと落ち合いました。
ドアマンさんに開けて頂いたホテルの正面玄関から出ると先ほどの青いオブジェが幻想的な空間を作られている所にズラリと並んだ高級車に呆然としました。
ロールスロイスやベントレーが10台以上はありベンツにBMWもありスポーツカーではフェラーリにランボルギーニやポルシェにマセラッティ等々が宮殿の方に集中して並んでいたのです。
以前に高級車が好きな自分の恩師がスーパーGTと言うレースに関わっていらっしゃった時にその会社で働かせて頂いていた関係でオートサロンやモーターショーのブースの出展の際に色々な車を見せて頂いた事がありましたがそのモーターショーの中でも目玉になるような車が殆どで限定であったり特注であったり先ず日本では車のオーナーズクラブの走行会くらいでしかお目にかかれない光景にビックリしながら携帯で写真を撮っている自分がいました。
ドロップヘッドクーペと言うモデルのロールスロイスファントムのオープンカーや今は新車の販売がない希少なコーニッシュと言う型のロールスロイスのオープンカーにレイスと呼ばれる新しいモデルまでロールスロイスだけでも色々な貴重な種類が並んでいましたし、ベントレーもコンチネンタルと言う販売台数の多いモデルからSUVの型のものやミュルザンヌと言うフラッグシップモデルまで日本で見たら思わず振り返ってしまうレベルの素晴らしいものばかりでした。
ホテルの車が高級車ならまだ分かるのですがモナコはタクシーでもベンツやベントレーまであるのでビックリしてしまいます。