9章 「サント・シャペル」
翌朝、電話が鳴って目を覚まし予約を取らせて頂いた朝食の時間が近い事をスーさんに教えてもらい着替えて歯を磨き今から朝食を食べるのに歯を磨いている事にまだ寝ぼけているのを知りました。
この日は色々と回る事を予定していたので顔を洗って気を引き締め直しました。
1階で提供して頂いた朝食は半熟の卵が乗ったパンにソーセージにフルーツの盛り合わせと朝から美味しくてテンションを上げて頂けました。
一度シャワーを浴びに部屋に戻りコートを取って世界最大規模の大きさを誇るルイ・ヴィトンのパリ本店に向かう事にしました。
エルメスに比べるとこの日はそこまで混んでいなかったのか割りかしスムーズに入れましたがお店の中は沢山のお客さんで溢れかえっていました。
店内には、これでもかと言うほどの色々な種類の物が売られていましたし書籍があるコーナーまであり楽しめる空間になっていました。
取り分け自分が気になったのが2階から見える幾何学模様の天井で芸術的だなーと見ていると黒人の2mくらいの身長がある大きな定員さんが来て携帯で写真を撮るジェスチャーをされました。
てっきり店内は写真撮影は駄目ですからねと注意をされたのかと思っていたら、すかさずスーさんが訳して下さいました。
「僕は背が高いから綺麗に撮れる。
携帯を貸してもらえたら代わりに撮りますよ。」
との優しいお言葉に何て良い人なんだろうと撮って頂いた綺麗な写りの写真を見ながらとても良い気持ちにさせて頂きました。
それからエッフェル塔を間近では無く綺麗に撮れるスポットとしてシャイヨー宮に向かわせて頂き写真を撮っていると本当にエッフェル塔のみがクッキリと目立つような感じになっている事に気付き東京タワーだと周りのビルが入るのでこんな風に撮るのは難しいだろうなと同時に思いました。
そこからポン・ヌフ橋と言う有名な橋をタクシーに乗りながら横目にノートル・ダム大聖堂に向かわせて頂きました。
真っ暗な服に銃を抱えられた軍人さんが守られている大聖堂には沢山の観光客の人と信者の人がいらっしゃりセーヌ川の横に立っている入口には数えきれないほどの彫刻が施されていて筆舌に苦っする半端じゃなく手の込んだ造りになっていました。
中に入ると暗闇に灯るライトと差し込んだ陽の光が素敵な雰囲気を醸し出していて丸い大きなバラ窓と言うステンドグラスの綺麗さにうわーっと口から思わずもれてしまいました。
色々な歴史的な像がある中でも縦長のステンドグラスの下にある金色の細工の中の十字架を背負っているキリストの絵がある場所は圧感で無宗教で芸術を分かっていない自分でさえ、ため息が出るほど美しかったです。
これまでのノートル・ダム大聖堂の建築過程を読めないながらも絵があるので何となく理解が出来るように順番に示された説明を一通り見させて頂きやっぱり大聖堂は特別な存在なのだなと改めて思う事が出来ました。
ここから念願であったサント・シャペルに向かわせて頂く事にしました。
ノートル・ダム大聖堂からサント・シャペルのある裁判所はセーヌ川を橋で渡った5分くらいの場所で自分の足でも頑張れば15分くらいで着ける距離にありました。
パレ・ド・ジャスティスと書かれた裁判所には何重にんも沢山の人が並ばれていてこの建物の中に果たしてそんな綺麗な物があるのかと思ってしまうほどに整然としています。
それもその筈でこちらは、れっきとした現在使われてる裁判所なので浮かれた人はあまりいない様に感じました。
行列に並び10分くらいすると係りの人が何かを説明されて並ばせて頂いていた行列が2つに別れました。
どちらに並ぼうか迷っていると
「裁判の傍聴に来た人とサント・シャペルに来た人で列が別れました。
サント・シャペルの人はこちらの列みたいです。」
とスーさんが教えて下さったのでそちらに並ばせて頂き待っていると少しずつ前の方の人たちが中に入られて行く感じがしました。
少し裁判所の敷地内を歩きサント・シャペル教会の入場チケットを売っている所で10ユーロで買わせて頂きセキュリティーチェックを受けて1階のお土産コーナーがある部分を見ながら柱の近くにマリア様の彫像がポツンと少し寂しげに飾ってありました。
うーん。確かに綺麗なんだけど本当にここで合っているのかと少しの不安を抱きながら前の人が次々と登って行かれる細めの階段を上がり2階に出たと同時に息を飲んでしまいました。
言葉が出ないとはこの事で自分の想像を遙かに超えたこんな美しい物がこの世にあるのだと言う驚きで実際に、うわー等の感嘆の声すら出せない光景がそこにはありました。
正面も両横も後ろも天井以外の見える部分は、ほぼ紫色味のあるステンドグラスで埋め尽くされていて、ゴシック建築の頂点と言われるこのステンドグラスに聖書に書かれている物語を1000以上のシーンで人類の創世からキリストの復活までの人間の歴史を表現されているらしく円形の大きなバラ窓と呼ばれる場所は聖ヨハネの預言者である黙示録などと日本語でも説明文に書いてありますが
この様な説明が無くとも訪れた人が
「世界最古にて最高のステンドグラスである。」
と口を揃えて言われるのが正しい印象だと思います。
勿論、予習をしてこの部分がこの物語の部分でと分かって見る方が詳しく全てを見れるのは間違いは無いと思います。
ですが何も知らなくても見るだけで必ず感動が出来ると断言出来ますし自分がネット上の画面越しに想像をしていた物など比べ物にならない美があり時が止まるかのような究極の光景が実際に存在していました。
これぞ正しく聖なる教会と呼ばれるサント・シャペルなのだと30分くらいその場から離れられずに見惚れて生きてこの感動に出逢えた事を感謝していました。
池袋のBARでこの場所を教えて下さったスタッフさんのお話しはこのパリで間違いなく1番の良い思い出になり、その人にも自分は同じく感謝をしていました。
目を瞑ればこの光景を思い出せるようにと記憶に焼き付けて有難う御座いましたと言って頭を下げて螺旋階段を降り次に行く予定であったオランジュリー美術館へと向かわせて頂きました。
オレンジなどを育てるための場所がオランジュリー美術館になったらしいですが睡蓮で有名な画家モネの作品が見れると知りせめて一度くらいは実物を見てみたいと思い絵画の何かを知らないまま興味本位で来てしまいこちらはモネの生涯を知ってから来るべきだったと思いました。
絵画の概念が自分の認識では額に入るイメージでしたので横長の睡蓮の絵が何mも1枚の絵で表現されていて、こう言う芸術もあるのだと初めて知り、いくつもの睡蓮の絵に見た目の違いは分かれど何がどのように違って良いのかまでは全然分からなかったので丹念に1つ1つを食い入り教わるかの様に見ていらっしゃる方に申し訳ない気持ちがして今度来るときにはモネについて勉強をしてから来ようと思い長居せずにオランジュリー美術館を後にしました。
この日はスーさんお勧めのGOUMARDと言うお店の予約が取れたので夜ご飯をそちらに食べに伺わせて頂きガラス細工で作られたお魚のオブジェを見てこれも綺麗だなと思いながらモナコで食べたような牡蠣やスープに炒め物を注文して頂き魚介類が美味しいお店なのだと教えてもらいました。
この1日でルイ・ヴィトンやノートル・ダム大聖堂にサント・シャペル教会そしてオランジュリー美術館とそれぞれ異なる物を見に回れてパリは本当に何処に行っても芸術があるのですねと思い返してスーさんに話すと
「私は芸術には興味が無い人間ですがあのステンドグラスは素晴らしいと思います。」
と何度もパリに来られているのに美術館などや教会などに殆ど行った事が無かったけれどサント・シャペルは見た事がなく後悔をされた事とこの日は見れて感動なされた事を話して下さいました。
ホテルへ戻り歩き疲れた足の装具を外してお風呂に入り湯船の中でサント・シャペルはおそらく生涯忘れられない感動になるのだろうなと思い、翌日の夜には日本へと帰るいよいよパリの最終日なのだと少し感傷に浸りながらベッドに行き沢山の芸術に触れられた事がとても有難い事だなと考えているうちにこの日は眠りについていました。